≪コーダイ文芸科 科目番号:36≫  ドラマテックに学ぶ古事記と万葉集

                                 ≪コーダイ文芸科 科目番号:36≫  

           ドラマテックに学ぶ古事記万葉集

                                      講師:林 和清 先生

 

  古事記を学ぶ  第一回 天地開闢 てんちかいびゃく】

 ・古事記は、日本の歴史・神話・伝承を収めた最古の歴史書であり、8世紀初頭に編纂されたとされています。古代日本の神話や歴史上の出来事、神々や英雄たちの物語などを、漢字文化が伝来する前に口承されてきた伝承を、漢字文化のもとでまとめられたものです。また、天皇の系譜や国家の創成に関する記述も含まれています。古事記は、日本の文化・歴史の基礎となる書物の1つとされています。

 

古事記は、天武天皇の命により稗田阿礼が暗唱していた『帝紀』・『旧辞』を太安万侶が書き記し、」編纂したものとされている。

 

           (稗田阿礼太安万侶

             

 

                (太安万侶墓 奈良市此瀬町

 

古事記に関する基本情報

  • 完成年 712年(和銅5年)  ・巻数  3巻    ・表記方法 和文

内容

3巻、つまり上巻(神話)、中巻と下巻(天皇家の系譜や事績など)からなる。

古事記上つ巻】                     

神話は、人が、大地やそれを取り囲む異界や自然、あるいは神も魔物も含めた生きるものすべての関係を、始まりのときにさかのぼり、そこに生じた出来事として語ろうとする。

それによって、今ここに生きる根拠を明らかにし、また未来を生きる根拠も明らかになる。それが限りない未来を約束することで、共同体や国家をゆるぎなく存続させます。

 

・20世紀の著名な歴史学者アーノルド・トインビーが残した次の言葉を心にとどめるべきであろう。

『12,13歳くらいまでに、民族の神話を学ばなかった民族は、例外なく滅んでいる』

『文明は状態ではなく、運動である。港ではなく、航海である』

 

第1回 天地開闢(てんちかいびゃく)-----はじめて世界がひらかれる。

天地《あめつち》初めて発(あらは)れし時、高天原《たかまがはら》に成りし神の名は、天之御中主神《あめのみなかぬしのかみ》。次に、高御産日神《たかみむすひのかみ》。

次に、神産巣日神《かむむすひのかみ》。此の三柱《みはしら》の神は、並《とも》に独神《ひとりがみ》と成り坐《ま》して、身を隠しき。

天と地とが初めて分かれてたときに、高天原たかまのはらに現れ出でた神の名はアメノミナカヌシノカミ次にタカミムスヒノカミ次にカムムスヒノカミである。この三柱の神は、すべて単独の神として出現した神であり、姿を現わされなかった。

 

次に、国稚《くにわか》く浮ける脂の如くして、くらげなすただよへる時、葦牙《あしかび》の如く萌え騰《あが》れる物に因《よ》りて成りし神の名は、宇摩志阿訶備比古遅神《うましあしかびひこぢのかみ》。次に、天之常立神《あめのとこたちのかみ》。此《こ》のニ柱《ふたはしら》 の神も亦《また》、並《とも》に独神《ひとりがみ》と成り坐《ま》して、身を隠しき。

上《かみ》の件《くだり》の五柱《いつはしら》の神は、別天つ神《ことあまつかみ》なり。

次に、国土がまだ若くて固まらず、水に浮いている脂のような状態で、クラゲのように漂っていた時、葦あしの芽が泥沼の中から萌え出るように、萌え上がる力がやがて神と成った。それがウマシアシカビヒコジノカミであり、次に、アメノトコタチノカミである。この二柱の神も、単独の神として出現し、姿形を現わされなかった。 以上の五柱の神は、天つ神あまつかみの中でも特別の神である。

 

次に、成し神の名は、国之常立神《くにのとこたちのかみ》。次に、豊雲野神《とよくもののかみ》。此のニ柱の神も亦、独神《ひとりがみ》と成り坐して、身を隠しき。

 次に成りし神の名は、宇比地邇神《うひぢにのかみ》。次に、妹《いも》須比智邇神《すひちにのかみ》。次に、角杙神《つのぐひのかみ》。次に、妹《いも》杙神《いくぐひのかみ》。

次に出現した神の名は、クニノトコタチノカミ、次に、トヨクモノカミである。この二柱の神も、単独の神として現れて、姿形を現わされなかった。 次に成り出でた神の名は、ウヒデニノカミ。次に女神のスヒヂニノカミ。 次いでツノグヒノカミ。次に女神であるイクグヒカミ。

 

次に、意富斗能地神《おほとのぢのかみ》。次に、妹大斗乃弁神《いもおほとのべのかみ》。次に、於母陀流神《おもだるのかみ》。次に、妹《いも》阿夜訶志古泥神《あやかしこねのかみ》。

 次に、伊耶那岐神《いざなきのかみ》。次に妹《いも》伊耶美岐神《いざなみのかみ》。

上《かみ》の件《くだり》の、国之常立神《くにのとこたちのかみ》より以下、伊耶美岐神《いざなみのかみ》より前、あわせ称して、神世七代《かむよななよ》。

上《かみ》の二柱《ふたはしら》の独神《ひとりがみ》は、各《おのおの》一代《ひとよ》と伝《い》ふ。次に双《なら》ぶ十《と》はしらの神は、各《おのおの》二神を合わせて一代《ひとよ》と伝《い》ふ。

次いでオホボクノチ神。次に女神であるオホボクノベ神。次いでオモダル神。次に女神のアヤカシコネ神。 次いで伊邪那岐イザナキ命次に女神の伊邪那美イザナミである。上に述べたクニノトコタチからイザナミまでを合わせて神世七代という)。